歯周組織再生療法とは

歯周病は進行すると歯肉だけでなく、歯を支える骨(歯槽骨)や歯根膜まで破壊し、最終的には歯が抜け落ちてしまう深刻な病気です。従来の治療では、進行した歯周病に対して歯肉や骨の再生は困難とされてきました。しかし近年は、再生医療技術を応用した「歯周組織再生療法」により、失われた組織を再び取り戻すことが可能になりつつあります。特殊な再生材料や生体由来の因子を利用し、歯槽骨や歯根膜の再生を促すことで、歯を長期的に残すことを目指す治療です。当院では、従来の歯周基本治療や外科処置だけでなく、患者さまの状態に応じて再生療法を積極的に取り入れています。

歯周組織再生療法の目的

歯周組織再生療法の最大の目的は、「歯を抜かずに残す」ことにあります。歯周病で失われた骨や歯根膜が再生すると、歯の動揺が抑えられ、咬合力を支えられるようになります。また、再生療法は単に歯を残すだけでなく、口腔内全体の健康を長期的に維持するためにも重要です。歯を失うと咬合崩壊が進み、全身の健康にまで影響を及ぼすことが知られています。そのため、歯周組織再生療法は「歯を守る治療」から「全身の健康を守る治療」へと進化しているのです。

  • 失われた歯槽骨や歯根膜を再生させる
  • 歯の動揺を抑え、咬合力を支える
  • 抜歯リスクを減らし、歯の寿命を延ばす
  • 口腔内環境の安定と全身健康の維持につなげる

適応症例

歯周組織再生療法はすべての歯周病患者に行えるわけではありません。適応となるのは、骨や歯根膜の欠損の形態が「再生に適している」場合です。具体的には、垂直的な骨欠損があり、歯根が比較的しっかりしているケースが良い適応です。一方で、水平的に骨が溶けているケースや歯の動揺が著しい場合は、十分な効果が得られにくいことがあります。正確な診断には歯周ポケット検査やX線、CTによる精査が欠かせません。当院では精密検査のうえ、適応症例を慎重に選び、最適な治療方法をご提案しています。

  • 3mm以上の垂直性骨欠損がある場合
  • 歯根が保存可能な状態である場合
  • 重度の動揺がなく安定が見込める場合
  • 良好なプラークコントロールが可能な患者さま

使用される主な再生材料

歯周組織再生療法では、失われた組織の再生を促すためにさまざまな材料が使われます。これらは生体との親和性が高く、安全性が確認されているものです。代表的なものとして、エナメルマトリックス誘導体(EMD)、人工骨補填材、コラーゲン膜などがあります。これらの材料を単独あるいは組み合わせて使用することで、歯槽骨や歯根膜の再生を効果的に促すことができます。患者さまの症状や希望に応じて、最も適した材料を選択することが重要です。

  • エナメルマトリックス誘導体(EMD):歯の発生過程で重要な働きをするタンパク質を応用した製剤で、歯根膜や骨の再生を促進
  • 骨補填材:人工骨や自家骨を用いて骨の再生を助ける
  • GTR法(メンブレン法):コラーゲン膜を設置し、不要な細胞の侵入を防ぎつつ歯周組織の再生を促す

治療の流れ

歯周組織再生療法は、まず徹底した歯周基本治療から始まります。プラークや歯石の除去、生活習慣の改善がなければ再生は望めません。その後、再生療法が適応と判断された場合に外科処置へと進みます。手術は局所麻酔下で行われ、歯肉を切開し、感染組織を除去してから再生材料を適切に配置します。最後に歯肉を縫合し、治癒を待ちます。術後は定期的なメインテナンスが不可欠で、再発を防ぎ長期的な安定を目指します。

  1. 初診・精密検査(歯周ポケット検査・X線・CT)
  2. 歯周基本治療(スケーリング・ルートプレーニング)
  3. 適応症例の判断
  4. 外科処置(感染組織除去・再生材料の配置)
  5. 歯肉の縫合と治癒
  6. 術後の定期的なメインテナンス

メリット

歯周組織再生療法のメリットは、何よりも「歯を抜かずに残せる可能性が高まる」ことです。従来であれば抜歯が避けられなかったケースでも、再生療法によって歯の保存が可能となる場合があります。また、歯槽骨が再生することでインプラント治療の選択肢が広がることもメリットの一つです。さらに、咬合の安定が得られることで口腔機能が改善し、全身の健康維持にも寄与します。審美的にも歯肉の形態が整いやすく、自然な口元を取り戻すことができます。

  • 抜歯を回避できる可能性が高まる
  • 咬合の安定により食事や発音が改善
  • インプラント治療が可能になる場合もある
  • 審美的な歯肉形態が得られる

リスクと注意点

歯周組織再生療法は先進的な治療ですが、すべての症例に適応できるわけではありません。また、治療には外科処置を伴うため、術後に腫れや痛みが出ることがあります。喫煙や糖尿病などの全身的リスク因子がある場合、治癒が遅れることもあります。また、再生療法を行っても必ずしも骨が完全に戻るわけではなく、効果には個人差があります。治療を成功させるためには、術後の徹底したプラークコントロールと定期的な通院が不可欠です。

  • すべての症例に適応できるわけではない
  • 術後に腫れや痛みを伴うことがある
  • 喫煙や糖尿病は治癒を妨げる要因となる
  • 効果には個人差がある

当院の取り組み

当院では、歯周病治療において「歯をできる限り残す」ことを最優先に考えています。歯周組織再生療法を行う際は、精密検査を徹底し、適応症例を厳密に選定します。また、治療には経験豊富な歯科医師が担当し、必要に応じてマイクロスコープや歯科用CTを活用して高精度な処置を実現しています。さらに、術後のメインテナンス体制を整え、患者さまが長期的に健康な歯を維持できるようサポートしています。歯周病でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

  • 精密検査による適応症例の選定
  • マイクロスコープ・CTを用いた高精度治療
  • 経験豊富な歯科医師による施術
  • 術後の徹底したメインテナンス体制

まとめ

歯周組織再生療法は、従来では不可能とされてきた「失われた組織を再生する」という新しい治療法です。適応が限られるものの、適切な症例においては非常に大きな効果が期待でき、歯を残せる可能性が高まります。外科処置を伴うためリスクもありますが、定期的なメインテナンスと組み合わせることで、歯の寿命を延ばし、口腔内の健康を維持する強力な手段となります。当院では、最先端の知見と技術を取り入れた歯周組織再生療法を提供しています。


【ご注意】本ページは一般的な説明です。実際の適応・治療方法・費用は患者さまの状態により異なります。詳細は必ず歯科医師にご相談ください。